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年次有給休暇管理簿とは?対象者、罰則、作成方法、保存期間などについて解説

2024.07.26

2019年4月1日以後、企業規模を問わず、年10日以上有給休暇を付与される労働者に対して付与された日から1年以内に5日の時季指定が義務化されています。この時季指定義務と併せて「年次有給休暇管理簿」の作成も義務付けられています。今回は、年次有給休暇管理簿について、対象者、罰則、作成方法、保存期間等について解説します。

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年次有給休暇管理簿とは

使用者は年次有給休暇を与えた場合には労働者ごとに取得した時季、取得した日数、基準日、残日数や使用者が時季指定した日を明らかにし、書面を作成しなければならず、これらの内容が網羅されている書面を年次有給休暇管理簿と言います。有給休暇の与え方については、労働者自身による請求、使用者による時季指定、計画的付与等複数の手法が想定されますが、年次有給休暇管理簿は労働者名簿または賃金台帳と併せて調製しても差し支えないとされています。

対象者

法律条文上は年10日以上の有給休暇を付与されている労働者に限定するということはなく、年10日未満の有給休暇付与対象者(例えば週に2日程度勤務するパートタイマー)も対象になります。年10日以上有給休暇を付与される労働者に対しては、付与された日から1年以内に5日の時季指定が達成できなければ法律上は30万円以下の罰金が科せられますので、年10日以上有給休暇を付与されている労働者に限り対象と考えられがちですが、そうではありません。

罰則

年次有給休暇管理簿を調整できていないことに対する直接的な罰則はありませんが、有給休暇の5日時季指定義務に対する罰則については次の通りです。付与された日から1年以内に5日の時季指定が達成できなければ法律上は30万円以下の罰金となり、これは「1人1罪」と考えられ、達成できなかった労働者が複数名いる場合、その人数分だけ罰金額も増えることとなります。

作成方法

次の3つの選択肢が考えられます。
(1)手書きで作成
見やすさ等を優先し、最も自由な形で作成が可能というメリットがありますが、最も時間がかかると言えます。また、修正が必要な場合にも対応に苦慮することが予想されます。

(2)エクセルで作成
(1)と同様に見やすさ等を優先し、最も自由な形で作成が可能というメリットがありますが、((1)ほどではないにせよ)作成に時間を要します。そのため、行政機関等から出されているフォーマットを活用することで時間短縮を図れます。

(3)システムで作成
書面で調製となっていますが、システムで作成してはならないということではありません。特にクラウド型のシステムで作成することで、場所を選ばずにデータにアクセスが可能となり、(1)や(2)と比べてデータの紛失リスクも少なくなると言えます。ただし、導入当初は操作手順の習熟に苦慮することや比較的ITリテラシーが高くない方の場合、導入に対して懐疑的な意見が予想されます。

保存期間

他の帳簿類と同様に3年の保存義務があります。

年次有給休暇管理簿について、対象者、罰則、作成方法、保存期間
有給休暇管理簿がない場合、まずは、どの労働者にどの程度有給休暇を付与しているかの把握が難しくなります。大企業のように毎年4月1日に新卒で一括採用を行う場合、採用時期が同じであるため、いつまでに付与しなければならないかは、ある程度予測が立ちますが、日本の99%を占める中小企業の場合、必ずしも毎年4月1日に限定して採用するとは限らず、中途採用も行われています。そうなると、労働者の数だけ基準日が異なりますので、いつまでに5日時季指定しなければならないのかの「デッドライン」の把握が難しくなるのは明らかです。

他には有給休暇は一斉に取得されてしまうと事業の正常な運営に支障をきたす可能性が高くなるため、ある程度、部署や労働者ごとに平均的に取得してもらうことで労働者の不満や過重労働を回避することもできると考えられます。年次有給休暇管理簿がなければ、例えばどの部署では平均的にどの程度の取得がされている等の把握が難しく、いつ、どの程度取得するのかは労働者の裁量に委ねざるを得ませんので業務が落ち着いたタイミング等、取得希望日が重複するリスクも生じ得ます。また、年次有給休暇管理簿を元に会社としても有給休暇の取得推移を把握することで1年が経過する間際に駆け込みで取得させなければ法違反となるような事態を回避できます。特に基準日が4月1日の場合、1年経過時は年度末である3月31日となります。もちろん職種にもよりますが、一般的には年度末は繁忙期となることが多く、この時期に対象労者全員に対して不足日数分をまとめて消化させるような労務管理ですと通常業務に多大な影響が予想されます。

最後に

年次有給休暇管理簿は年5日の時季指定義務違反を回避する意味でも重要なものです。特にこれから複数名の労働者を雇用していく企業の場合、労働者ごとに有給休暇発生の基準日は異なってきますので、基準日の把握が困難となってしまう前に、早期に準備を整えておくことが重要です。

蓑田 真吾

蓑田 真吾(ミノダ シンゴ)

みのだ社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士

社会保険労務士(社労士)独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は様々な労務管理手法を積極的に取り入れ企業の人事労務業務をサポートしている。また、年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革関する専門家として、実務相談を多く取り扱い、大手出版社からも書籍出版するなど、多方面で執筆活動を行う。

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