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コロナ禍で変わった労働環境。有給取得率や残業は?

2024.07.05

コロナが本格化し出した2020年から3年の時を経て、労務管理手法については大きな変化が見られました。労務管理手法の変化は我が国の最も多くを占める被雇用者に対しても直接的に影響が及ぶ部分で被雇用者の対応に迫られる人事労務担当者においてもこの3年間は激動の3年間であったと言っても過言ではありません。今回はコロナ禍で変わった労務環境やその間の有給取得率や残業に注視し、解説します。

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テレワークの導入による労働環境の変化

一部のエッセンシャルワーカーを除き、政府の要請によって、ルールの整備が追い付いていない企業であってもテレワークの導入は避けられないものでした。求職者目線でも、エッセンシャルワーカーでないにも関わらず、テレワーク制度が整っていない企業となれば、懐疑的に見られてしまうとの声もあり、ルールの整備以前に早急に導入に踏み切る企業も多くありました。もちろん、根底には感染拡大防止があるものの、これまで当たり前のように目の前で業務遂行していた同僚等が「画面越しの人」となり、これらの労働者を管理する中間管理職以上はテレワーク時の「労働時間管理」に頭を悩ませていました。そこで、様々な機器等を駆使し、労働時間管理に奔走することとなりますが、行き過ぎた管理によって「プライバシーの侵害」や「逆に生産性が下がる」といった反論があり、再考を余儀なくされた企業も少なくありません。また、これらの反論は「思っていても立場上口には出せない」といった問題を抱えている労働者の存在も一定数いるものと考えられることから、氷山の一角であると言えます。

他方、物理的に対面での労務提供の機会が少なくなった(緊急事態宣言解除後は全面テレワークから段階的に出社への切り替えも見られ始めた)ため、ハラスメントの相談が減ったという思わぬ形での副次的効果がありました。

その他、テレワークでも業務が十分に成り立つことが社会全体で証明されたため、高額な家賃を支払いつつづける都市部のオフィスに対して経営層から懐疑的な意見が出てきたため、オフィスの移転やコロナ禍後もテレワークを継続するといった動きも見られました。

テレワークについては労務管理ではなく、社会保険の見地から言及すると、「通勤手当」は一定額までは税法上非課税であるものの、社会保険上の「報酬」にあたるため、テレワークを通じて基本給は同じであっても(通勤手当がなくなるあるいは出社回数に応じた回数払いへ変更となったことが起因して)総支給額が下がることが多くなり、標準報酬月額が下がるといった動きに直結しました。これは短期的な視点に立つと、月々の社会保険料額の負担が少なくなる(会社負担分だけでなく従業員負担分も)ため、メリットにも見えますが、原則として65歳から受給開始となる厚生年金から支給される老齢厚生年金が低額になるというデメリットも孕んでいます。

よって、「労務環境」に注視した総括とすると、テレワーク導入を契機に多様な労務管理手法が現実的に運用可能であることを(自社だけでなく多くの会社で)実証できた点が挙げられます。また、ハラスメントは減少したように見えるものの、テレワークならではのハラスメント(例えばテレワーク時におけるWeb会議での仮想背景の制限や常時カメラオン設定)も出てきたことから、ハラスメントをゼロにするには相当な企業努力が必要であることも浮き彫りとなりました。

有給取得率

テレワークが増えたことにより、言葉を選ばずに申し上げるとある程度、自由度のある働き方となったため、有給休暇の取得率が逆に下がってしまったという問題に直面した企業もあります。ただし、2019年4月1日以降は年10日以上の有給休暇が付与される労働者には付与された日から1年の間に5日の取得義務があります。これはテレワークであっても例外ではありませんので、注意が必要です。他方、コロナ禍以降、「終身雇用」の確約が社会的にも難しいという情勢になり、副業兼業を認める企業が増えてきました。そこで、副業兼業にチャレンジする労働者が増えたことで、副業兼業者に対する労務管理(例えば雇用契約であれば週に1日程度のアルバイトであっても有給休暇は発生することや、雇用保険は65歳未満の場合主たる賃金を受ける企業のみでしか加入できない)の理解が浸透したことが挙げられます。

残業

コロナ禍により、多くの企業で売上減となり、各種助成金を活用し、雇用を守る動きが見られました。そこで、通常の賃金よりも高額となる残業代について、必要以上に残業を行うことは企業経営を圧迫することにつながるため、残業については使用者への承認制へと変更し、免疫力低下の引き金ともなる長時間労働の防止はコロナ感染の防止にも寄与するものとして、多くの企業で採用され始めました。それだけでなく、残業の承認制は必要以上の残業を抑制し、ひいては事業場ごとに締結する36協定の遵守にも繋がったと考えられます。

蓑田 真吾

蓑田 真吾(ミノダ シンゴ)

みのだ社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士

社会保険労務士(社労士)独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は様々な労務管理手法を積極的に取り入れ企業の人事労務業務をサポートしている。また、年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革関する専門家として、実務相談を多く取り扱い、大手出版社からも書籍出版するなど、多方面で執筆活動を行う。

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